ザ・ペニンシュラ東京
場の品格とホスピタリティ
場の品格とホスピタリティ

ホテルに到着した時に最初に体験する空間において、いわゆる “Sense of Arrival” が上質なものとして認識されることは、接客態度とあいまってそのホテルの全体的な評価を大きく左右することもある。

敷地は日比谷通りと晴海通りの交差点、西側に皇居から続くオープンスペースと内濠の水面や日比谷公園の緑が広がり、その中に突き出すような形状。プログラムは、最高水準のホスピタリティを標榜するワールドクラスのシティホテルの玄関とその周辺のランドスケープである。求められたのは、この地にふさわしい場の品格とホスピタリティの表現であった。配置計画では、三角形の街区形状をもつ敷地の中で、日比谷の交差点に接する最も鋭角な頂点の部分が正面玄関と車廻しになる。西側への空間の広がりを損なうことなく交差点の自動車交通量を意識させない環境をつくりだすために、まず、低い盛土の中に皇居外苑から引用したクロマツの植栽をほどこしたバンクによって、全体を柔らかく包み込むことを考えた。玄関とバンクの間の空間が、Sense of Arrival を演出する領域である。スタディ模型をつくってみて気がついたことは、この空間が想像していた以上に狭いことであった。そこで、その「狭さ」を「親密さ」に進化させるために、素材の選択とディテールには徹底的こだわったつもりである。

水の表情と石の造形がおりなすアンサンブルが、意図したこの場の品格とホスピタリティの表現である。The Peninsula Tokyo の総支配人であるマルコム・トンプソンは、「このランドスケープは、ホテルのゲストに向けられたホスピタリティの表現であるとともに、この街に捧げられたギフト(贈り物)であってほしい」という期待を表明していた。その期待の応えることができるものになっているかどうかが評価されるには、今しばらくの時間が必要かもしれない。

住所:東京都千代田区
規模:4,343m2
竣工:2007.05
事業主:三菱地所・Peninsula of Tokyo Limited
協働/建築:三菱地所設計