多摩ニュータウン稲城長峰地区
地域の環境構造
地域の環境構造

住戸の集合化によって、広大な都市オープンスペースの創出をもくろむこと。モダニズムの建築と都市がもたらした最大の成果のひとつといえるこの命題を、稲城長峰地区のランドスケープデザインでは地域の環境構造に組み入れることによって実体化している。

稲城市は都市近郊農業地域で、ことに果樹の生産が盛んである。約11haのスーパーブロックの東側の一画では、地域固有の果樹園の風景がアンズのグリッド植栽により再生された。南斜面の敷地の頂部に建つ2棟の板状住棟の南側には、クヌギ、コナラ、エゴノキなどからなる雑木林が造成されている。プレイロットと染色や料理といったテーマ別のハーブガーデンは、住棟のブロックごとのコミュニティ単位に配置された。これらを統合する緩やかな起伏の草地の広場と、おおらかな曲率をもって延びる園路。園路沿いには花崗岩の舗石が埋めこまれたナチュラルな側溝。土地所有や管理の区分を示す境界に設けられるフェンスなどはここではみられない。

約1,100世帯が住む新しいまちに用意された屋外空間の量と質は、環境と共生しながら「豊かなアウトドアライフ」を、自分達のものとして実感できるランドスケープデザインの実験であるといえるだろう。

住所:東京都稲城市

規模:109,700m2
竣工:1996.05
事業主:住宅・都市整備公団