東京ガーデンテラス紀尾井町では、南北方向に並行して延びる3つの空間軸によって、街区の景観的な骨格構造が形成されている。西側の紀尾井町通りの街並みと沿道に連続する広場がつくる軸、東側のプリンス通り(諏訪坂)に沿って続く街並みの軸、そして北側の清水谷公園から街区内へと貫入してくる楔(くさび)状の緑である。これら3つの軸は、国際化した現代のTOKYO(紀尾井町通りの軸)、旧李王家邸に代表される近代の東京(プリンス通りの軸)、近未来のあるべき都心の自然環境(中央の緑の軸)、をそれぞれ象徴している。また、近世の江戸を継承する弁慶濠の石垣と成熟したサクラ並木にそって続く遊歩道が、南北方向の3つの軸をうけとめ、それぞれをつなぐ役割をはたしている。このように、時代を象徴する明快な3つの空間軸が歴史的な環境に接続し連携することによって、街区の全体に記憶にのこる景観の多様性と風格ある佇まいをもたらしている。
シークエンスを形成する「7つの景」
東京ガーデンテラス紀尾井町では、前記した南北方向の3つの空間軸とそれらを受けとめる弁慶濠沿いのプロムナードによって基本的な景観の構造が形成されている。この骨格構造に沿って展開する多様な景観のシークエンスは、街区西側の紀尾井町プラザ①と南東コーナーに位置する赤坂御門広場②、それらをつなぐ弁慶濠沿いのサクラ並木と遊歩道③、街区の中心をなすセンタースクウェア④、旧李王家邸前の歴史広場⑤、緑と花の溢れる紀尾井町ガーデン⑥、そして清水谷公園に続く紀尾井の森⑦、これら7つのエリアを主要な結節部として、それぞれが特徴ある景をつくりだしている。これらのエリアにおけるデザインでは、できるかぎりシンプルな線形と造形の組み合わせにより、主景となる歴史的遺構や歴史的建造物、新しい建築の特徴ある低層部のファサード、アートワークと一体となった品格のある佇まいをめざしたものである。また、そのために用いた落ち着いた色調と質感の石材、保全された既存樹と在来種を中心とした新たな植栽計画の組み合わせ、穏やかな水の表情をみせるいくつかの水景施設等は、相互に補完し合いつつ、いずれも時間の経過とともに成熟する持続可能なランドスケープの基盤を形成している。
住所:東京都千代田区
規模:30,300m2
竣工:2016.07
事業主:西武プロパティーズ
協働/建築:KPF, 日建設計, LPA
受賞:第37回緑の都市賞 都市緑化機構会長賞(2017)、AACA賞 特別賞(2016)