中野坂上
青天井の地下空間
青天井の地下空間

地下鉄のホームや改札口のレベルと地上の街路レベルの中間に位置する公開空地の広場は、2つの異質な空間を無理なくつなぐ役割をはたしている。たとえば、地下鉄を降りて街に出ようとする人が方向感覚を獲得するための場と機会を提供し、地下鉄に乗ろうとする人には広場全体が動線を吸収して、滑らかな人の流れを誘導する。また、街路よりも一段低いレベルに設定された広場では適度な囲みによる領域感が形成されており、「青天井の地下空間」とでも呼ぶことができる特徴的な空間をつくりあげている。  地下鉄駅につながる動線の結節点は、同時に人々の一時的な滞留空間として利用される可能性を秘めている。快適な滞留空間を形成するために、広場全体が緩やかな勾配によって街路レベルに達する斜面としてデザインされており、レベル差を利用したベンチや芝生のスペースを配置している。また、交通量の多い山手通りに対しては、コルテン鋼のウォールや換気塔などの垂直的な要素が心理的なスクリーンとして、高層建築の圧迫感に対しては、枝下の大きな落葉樹が緑の天蓋として作用している。  広場全体の空間的なテクスチュアは、有機的なものと無機的なもの、自然的なものと人工的なもの、平面的なものと立体的なものの対比と組み合わせによって醸し出されている。例えば、舗装材には金属的な質感のものと自然石の風合いを強調した仕上げのものが併用され、植物材料においても、有機的な形をもつ落葉高木の幹や樹冠に対して平面的な常緑の地被植物が対置されている。これらに、金属の壁面やガラスのシリンダーなど垂直的な要素が加わり、都市的な緊張感の中にも、時おり自然が断片的なイメージとなって顔を覗かせる空間に仕上がっている。

住所:東京都中野区

規模:37,940m2
竣工:1999.03
事業主:中野坂上中央一丁目西地区再開発組合
協働/建築:INA新建築研究所