九段会館テラス
環境・歴史・人をつなぐ
環境・歴史・人をつなぐ

登録有形文化財である「旧九段会館」を一部保存・復原しながら、オフィス主体の複合ビルに建て替えたプロジェクトである。

敷地は、武蔵野台地の東端部に位置しており、台地上の北の丸公園を背景とする牛ヶ淵と、低地の都市的にぎわいを持つ内堀通りという二つの対照的な環境に接している。そこで、ランドスケープデザインにおいては、この二つの環境をつなぎ、周辺エリアにおける街の回遊性向上やウォーカブルな街としての魅力向上に寄与することが求められた。さらに、事業者が実践する“GREEN WORK STYLE”を体現するため、広場や屋上庭園など随所において、人と緑の多様な接点を増やすことを試みている。

このような考えのもと、敷地北側では、内濠から連続する桜などの緑とともに、大小様々な滞留空間を内包したオープンスペースが連なり、通りからお濠へ歩行者をいざなうランドスケープデザインが展開されている。内堀通りから歩を進めると、来訪者を迎える“エントランスガーデン”、正面玄関前のフォーマルな前庭 “九段ひろば”、小さなテラス状の滞留空間を内包する“ステップガーデン”、内堀沿いの新たな親水空間“お濠沿いテラス”という構成となっている。

歩行者動線としては、昭和館から隣の街区までをつなぎ、南側隣地の千代田区施設と一体的な整備を行った“九段こみち”と共に、内濠沿いを回遊する新たな歩行者ネットワークを形成している。

旧九段会館保存部5階レベルに設置された3か所の屋上庭園では、荷重制限に配慮したディテールと素材選定のもと、個々の異なる利用に応じた趣の異なる庭園が設えられている。

屋上庭園を含め各所に設置されたベンチなどのファニチャーには、九段会館ゆかりの意匠がこめられているが、これは九段会館のレトロな雰囲気と歴史を受け継ぎ、モダンな場の整備を目指したものである。幾多の歴史が刻まれるこの地において、その記憶を新たな来訪者へ伝える一助となることを期待している。

住所:東京都千代田区

規模:8,680 m²

竣工:2022.07

事業主:合同会社ノーヴェグランデ(東急不動産・鹿島建設)

協働/建築:鹿島・梓設計・工事監理業務共同企業体

照明:Lumimedia lab

植栽設計協力:㈱ランドスケープデザイン

受賞:第32回 緑の環境プラン大賞 都市緑化機構賞(2021)