敷地は、横浜みなとみらい地区の都市構造を形成する2つの都市軸(キング軸とみなとみらい軸)が交差する場所からほど近いところ、横浜駅とみなとみらい地区の接点となる立地にある。施主である資生堂は、人、モノ、情報が交錯するこの場所に、製品の研究開発を担当する社員と顧客が直接コミュニケーションするための場を、まちに開かれた空間の中に創出した。ランドスケープデザインでは、施主が掲げる企業理念に基づき、「顧客と企業」「まちと建築」「自然と人間」それぞれのインターフェイスとなる状況を設えることをめざしている。屋外空間の床面には極力段差が発生しない計画とし、おおらかな中にも緻密なレベル操作をおこなうことで、敷地のどこからでもアクセスできるシームレスで滑らかな地表面が形成された。これにより敷地内外の回遊性を高め、随所に顧客と企業、建築とまちがつながる場がうみだされる。
資生堂の社名は、中国の古典のひとつ『易経』の一節にある「至哉坤元 萬物資生」(大地の徳はすばらしい。全てのものはここから生まれる。)に由来している。人工的に造成された埋め立て地の一隅に確保された敷地において、大地のもつ植物の生育基盤としてのポテンシャルを引き出し凝縮させるマルチングの手法を地表面のデザインに応用し、社名の由来を象徴的に表現した。具体的には、自然界で偶発的に生まれる有機的な平面形状によって舗装面を穿ち、下層の土壌が大気に接するところに良好な植栽基盤が整え、大地とのインターフェイスを形成している。ここに生育する植物が美しく快適な環境をもたらし、様々な時間のサイクルの中で絶え間なく移り変わることで、この場所にかかわるすべての人々に新たな発見とインスピレーションをもたらしてくれるであろう。
住所:神奈川県横浜市
規模:7,000m2
竣工:2018.10
事業主:資生堂
協働/建築:
鹿島建設
内原智史デザイン事務所
受賞:環境・設備デザイン賞 II 建築・設備統合デザイン部門 優秀賞(2020)