勝浦市芸術文化交流センター
地形の建築的形態操作
地形の建築的形態操作

当施設KÜSTEは、ドイツ語で「海岸」を意味している。その名前の通り、外房の海岸から500mしか離れておらず、海抜TP+39mの高台に位置している。海を一望できるこの場所は、津波を回避しながらも勝浦らしい風景が広がり、市役所、警察署とともに市の中心施設が集められている。KÜSTEは変化に富む海岸地形とに緑豊かな丘の上で、勝浦のエッセンスを集めた新しい文化・交流のシンボルとして建設された。

グランドとして造成し利用されてきた敷地は平坦な広がりを持ち、エッジ部分には原地形とのひずみや造成法面が現われていた。建築は複雑で強い自然地形に対して、シンプルな正方形のプランを与え、敢えて変化ある敷地のエッジに配置されている。ランドスケープはこれを受け取り、周辺地形と建築との間を取り持ち、高低差のあるランドフォームをアーキフォームに重ね合わせることをコンセプトとした。

波の浸食によって露わになった勝浦独特の「段」を重ねたような海岸風景、街中に展開され神社の石段を利用して飾られるひな祭りの「段」のエッセンスを取り入れ、フトンカゴ土留め擁壁によって、造成地形を雛壇状の建築的形態に置き換えた。軟岩地盤への植栽に関しては、フトンカゴにより嵩上げをおこない植栽基盤を確保した。また、原地形と造成法面とのひずみを解消するために設置したフトンカゴの擁壁とともに、広い敷地に骨格を与え、建築と共にKÜSTEらしい風景を目指した。敷地内に植えられた木々は、来訪者にとって周囲の丘の緑の前景となり、勝浦市の緑豊かな景観に連続してゆく。

住所:千葉県勝浦市
規模:13,060m2
竣工:2014.12
事業主:勝浦市
協働/建築:山下設計