押上・業平橋駅周辺地区公共施設修景整備
「国際観光都市」に相応しいランドスケープ
「国際観光都市」に相応しいランドスケープ

都市再生機構のコーディネーションにより、隣接する3つの整備エリアの各事業主体(東武鉄道、押上・業平橋駅周辺土地区画整理組合、墨田区)で協議を重ね、誰もが認めるランドマークとなる東京スカイツリーと足元で支える周辺の公共空間づくりにおいて、「国際観光都市」に相応しいランドスケープの創出を目指した。これは、タワー、みち・広場、運河沿いの公園という隣り合う整備エリアの境界を意識させないような全体のコンセプトでもあり、その風景像の実現のために以下の2つのテーマを掲げた。

① 環境づくりのテーマ:『みどりの丘から河岸の水辺へ』
環境都市・江戸の伝統をうけつぐ都市空間の形成のために、タワー街区の「みどりの丘」をくだり、駅前広場の「駅前の森」をぬけて、北十間川の「河岸の水辺」にただよい、地域と連続するような立体的な水と緑の回廊づくり。北十間川・道路・タワー街区の断面的な緑の連続感を創出するため、駅前広場や道路にもボリュームのある高木の植栽を積極的に施した。

② まちづくりのテーマ:『「いき」なしつらえのまちへ』
江戸の下町で育まれた町人文化を代表する「いき」という暮らしの美意識を「デザインコード」として街の様々な場所のしつらえを整える。「形・色・柄・材」の4つの視点からエリアを越えたデザインイメージの統一にはこだわり、舗装材、シェルター、横断防止柵、照明器具などのデザインを行った。具体的には、生コン発祥の地=コンクリート、鉄道敷地のアイデンティティ=鉄にリン酸亜鉛処理(艶消し黒)、人の活動と商業の溢れ出し=ガラス、という3つの素材と仕上げの共有化である。

これらのテーマは、江戸から近代までの歴史と新タワーによる先進性の調和を図る安全安心で環境と共生したもてなしの場としての公共空間を形成する「公共空間デザイン指針」による基本方針を引き継いている。東武鉄道によるタワー街区、押上・業平橋駅周辺土地区画整理組合(事業包括受託:都市再生機構)による区画街路、街区公園、駅前広場、そして、墨田区による北十間川両岸のテラスの3つの整備エリアで共通のデザインコンセプトの調整を図ってきた。

住所:東京都墨田区
規模:16,600m2
竣工:2012.03
事業主:押上・業平橋駅周辺土地区画整理組合、UR都市機構
協働/建築:岩井達弥光景デザイン事務所、トライビート

photo : Hayato Wakabayashi