飯田橋サクラパーク
街の基壇のデザイン
街の基壇のデザイン

外濠を渡って江戸城の外郭に入る地点にあった牛込見附の跡が、このプロジェクト敷地の端緒である。敷地は細長い形状を有し、四周の街路の接道面において最大で約8mの高低差があるため、高層建築をそのまま接地させると、機能的な不都合を解消するために景観的な混乱が生じると予想された。そこで、建築と土地の関係を調停する「基壇」の概念を想定し、そこをデザインの出発点としている。

基壇には、建築計画と周辺街路の機能的関係から4つのタイプを想定した。一つめは、基壇の上部をスロープ状に緩やかな勾配のある広場とするもので、JR飯田橋駅西口からのアプローチとなる駅前広場がそれにあたる。 二つめは、基壇の上部をフラットな面としてしつらえたテラスで、二棟の高層建築の間にあるパッサージュがそれにあたる。そして三つめは、基壇のレベル差を解消するための装置であり、このパッサージュにいたる2つの階段である。さらに四つめは、建築と土地の関係を調停する基壇の垂直面そのものである。

基壇をデザインすることで、街との間に新しいインターフェイスがうまれる。オフィスタワー側の大小二つの広場のうち、西側の駅前広場は駅の改札口を介して東京全体とつながる場所であり、舗装によって土地の履歴を表現しつつ街の正面玄関としてしつらえた。一方、教会東側の広場は、街路を介してローカルなコミュニティとつながる場所であり、ヒューマンスケールの緑や様々なアクティビティを支える装置を配置した。また、2棟の高層建築の間のパッサージュとそこにつながる階段は、外濠公園通りと区道262号をつなぎ、街区全体に回遊性と賑わいをもたらす。さらに、外濠公園通り側では外濠公園に呼応する立体的な緑のボリュームによって、区道262号側では基壇の建築的な立面におけるハード(石材、金属等)とソフト(植栽)の素材の組合せによって異なる街並の表情を形成した。これら多様なインターフェイスのありようが、街区の長辺に沿って移動する際のシークエンスの形成に寄与している。

住所:東京都千代田区
規模:16,710m2
竣工:2015.02
事業主:飯田橋駅西口地区市街地再開発組合
協働/建築:日建設計・前田建設工業飯田橋駅西口地区市街地再開発事業施設建築物設計監理共同企業体、LPA