立教女学院
受け継がれる風景
受け継がれる風景

立教女学院は古くから地域に親しまれてきた井の頭恩寵公園にほど近く、井の頭池から東に神田上水(神田川)が流れ出る。学院は井の頭池に向かって南東から北西方向に切れ込む谷を形成する崖線上部の台地の縁に位置している。

長い伝統を持つこの学院は緑豊かなこの地域においても特に緑が保全された敷地といえる。ここに新たな校舎を建設するにあたって、既存の樹林と新築の校舎との関係の整理が求められた。理事長、院長、各学校の校長、と設計者による建設委員会において、学院のアイデンティティーの確保と、さらなる環境向上とともに、地域における緑の重要性を共有し、絶対的なスペースの制限のなか、いかに緑を効果的に保存するか、また、移植によりさらなる魅力を生み出す提案をおこなう必要がある。

このプロジェクトにおけるランドスケープデザインは、現在では見えにくくなっている環境資源を顕在化させることによって、より価値ある環境資産として再生することを目的としているといえる。

本計画では建築計画も含めて既存の建築群の持つ軸を中心に展開し、メインエントランスから、既存中庭へとつながる空間を、学院全体を有機的につなぎ合わせる空間軸であり、建築と自然の結節点として位置づけた。

また、その展開は、樹木密度の段階的変化、ペイブメントの表情の変化、などによって表現され、人々の行動や自然のあらわれ方に変化をもたせている。

特に、メインエントランスから中に続くアプローチは緑豊かな学院のイメージを受け継ぐ重要な樹林であり、人の動線を広げるという当初の目的をを満たしながら、既存樹の保存を成り立たせるデザインが求められた。

計画に重なる樹木、特にケヤキ等の大木は移植とし、伝統を継承するという意味から、代表的なもの移植をおこなった。グランド位置のケヤキは体育教員との度重なる打ち合わせにより、保存を実現させた。教員を含め関係者との密接なコミュニケーションは学院の歴史と将来の学院の姿を共有する最上の方法となる。

住所:東京都杉並区

規模:47,518m2
竣工:2002.03
事業主:立教女学院
協働/建築:山下設計