JPタワーのランドスケープデザインは、東京駅の駅頭そして丸の内の中心という東京都心の中でも特別な場所における屋外空間のあり方を追求したもので、「品格ある佇まいの中にしつらえられた緑のリビングスペース」をめざした。具体的には、下記の3つのエリアにおけるしつらえと緑、それらを支えるディテールデザインによって、心地よい屋外の居場所となる環境を提供している。 緑のコリドー:丸の内地区に整備されつつある歩行者動線のネットワークに連接し、安全で快適なペデストリアンスペースを提供している。常緑樹の並木道は、歩く人の気分を浄化してくれるかのように感じられ、遠回りしてでも歩きたくなるような佇まいをみせる。
街中のアルコーヴ:保存された旧東京中央郵便局舎の南側には、アトリウムから続く広場が位置する。東西・南北の歩行者動線が交差する地点に寄り添うスペースは、街角にしつらえられたアルコーヴのように、人と時間の流れに変化を与える。また、落葉樹のボスケは、夏季には快適な緑陰を、冬季には暖かさを感じる日だまりをもたらす。
天空のステージ:低層部の屋上は、アトリウムのトップライトを取り囲むような回遊庭園となっており、西、南、北の三方向への眺望が確保されている。特に復元事業が完了した東京駅の駅舎を間近に望むことができるように動線と視点場にゆとりをもたせた。また、保存された建築の荷重制限の範囲内において、できるだけ広い面積の緑を立体的にしつらえる緑化技術を採用した。
品格を醸し出すディテール:これら3つのエリアに共通するのは、場の品格を醸し出すディテールデザインである。落ち着いた色調とテクスチャーの舗装材、端正なプロポーションのファニチャー、整った形姿の樹木群など、個々の要素にはオーセンティックな意匠を用い、それらの組み合わせや取り合いにおいては、曖昧さを排除した折り目正しいディテールのおさまりを指向している。これらにより、リビングルームのような居心地のよさの中に、そこはかとなく漂う品格を表現しようと試みた。
住所:東京都千代田区
規模:11,600m2
竣工:2012.05
事業主:日本郵便株式会社、東日本旅客鉄道、三菱地所
協働/建築:三菱地所設計、MURAHY/JAHN、岩井達弥光景デザイン事務所