植村直己記念公園
冒険家を育んだ風景
冒険家を育んだ風景

敷地は南下がりの緩やかな斜面に小さな沢が入り込む微地形に縁どられた優しい土地である。そこには、連錦とつづられてきた人の営為と自然との相互干渉のありさまが、様々なかたちですでに存在していた。それらはすべて、人が自然に働きかけ、長い時間の流れの中でつくりあげてきたものである。

それは、自然に同化しつつも人間の意志の存在を表現するという、冒険家・植村直己の精神の出自を象徴するものでもあった。ゆえに、彼の感性を育んだ故郷の原風景とここを訪れる人々の位置をつなぐ状況を設定すること、それがこの作品の主題となった。

自然と人為がおりなすゆるやかな田園景観とその背景に連なる但馬山地の稜線が、この場をとりまく風景を象徴する。それに向けて開かれる状況は,北極圏を単独で横断する課程で植村が見たであろう雪原のクレバスを想わせる栗生明氏による建築造形、右手からユリノキの並木と砂利敷の園路、芝生、石の帯、灌木の刈込、ブロック敷の園路、そして磨きあげられた低い石のウォールの順で、入り口からまっすぐ延びるライン、そのラインが突然たち切られた先に浮かぶように見える美しい棚田状のテラス、これらの形態要素のコンポジションの上に生成されている。

住所:兵庫県豊岡市
規模:31,500m2
竣工:1994.03
事業主:日高町
協働/建築:栗生総合計画事務所
受賞:日本建築学会作品賞(1996)、土木学会デザイン賞「優秀賞」(2009)