ICI 総合センター
自然基盤の上に成り立つ技術研究所の佇まい
自然基盤の上に成り立つ技術研究所の佇まい
利根川から北東に向かって入り込んだ小さな谷戸の奥に佇むICI総合センター(ICIラボとICIキャンプ)。その複雑な地形の恩恵として残る斜面の雑木林を保全し、自然基盤の上に成り立つ技術研究所を計画した。
オープンイノベーションをテーマとしたICIラボは、既存の雑木林と連続した新たな森を背景に、エコロジカルな水循環システムによるビオトープが来訪者を迎える。微生物ろ過と井水や雨水を水源とし、利根川と小貝川を南北に結ぶエコロジカルネットワークの形成に寄与することを期待したものだ。
計画段階からプロジェクトに参画できたことにより、雑木林や地域に親しまれるサクラの大径木を保全すると同時に、建設行為により発生する残土を最小限に抑えたローインパクトの計画を実現した。
谷戸を挟んで向き合うICIキャンプは、廃校を利用した宿泊研修施設である。地域の緊急避難所の機能も担うことから、敷地内外の高低差をウッドデッキの小段などで緩やかにつなぎ、時間の積層をコンセプトとした建築計画と呼応し、地域に開かれた施設を体現している。
さらに、敷地内の雨水処理は、開発前の流出量を下回るように、敷地全体で積極的な雨水の地中涵養を行った。これは、雨水排水のインフラが脆弱な下流域を配慮したもので、緑地の保全やエコロジカルネットワークの形成を図るとともに、事業者が推進するCSV経営を体現するランドスケープデザインを実現した。
これからの時代、真のイノベーションの母胎となる環境は、自然へのリスペクトと謙虚な所作から生み出されるものと信じている。
住所:茨城県取手市
規模:75,000m2
竣工:2019,11
事業主:前田建設工業
協働/建築:前田建設工業,MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO (ICI CAMP)